(30-1-4)建築基準法42条2項道路内にある構築物について、除却を命ずるか、少なくとも除却を指導するよう求める
最終更新日:2019年1月25日
(30-1-4)建築基準法42条2項道路内にある構築物について、除却を命ずるか、少なくとも除却を指導するよう求める
平成30年11月7日 苦情申立受理
申立ての趣旨
建築基準法の特定行政庁である新潟市長が、新潟市B町地内にある建築基準法第42条第2項道路内に存在する構築物について、敷地の所有者及び設置者に対して、建築基準法第9条に基づき除却を命ずるか、少なくとも除却を指導するよう求める。
申立ての理由
1 建築基準法第42条第2項道路指定
新潟市A区B町16番9、同16番11 は、いずれも地目は「公衆用道路」とされ、建築基準法第42条第2項により新潟市により道路指定がなされている。(以下「本件道路」という。)
申立人C社は、同区B町18番8、同18番9及び同18番25の地上に所在する「アパートD」「アパートE」の2棟の共同住宅(以下「本件アパート」という。)を建築し、その後、管理を受託している会社である。
本件アパートの居住者は、専ら本件道路を生活道路として使用しており、引っ越しの際にも、これを使用するほかはない。
2 新潟市A区B町16番3の建築物(所有者F氏)
A区B町16番3所在の敷地及び地上建物は、F氏が所有するものであるが、地上建物は、(1)昭和42年10月に新築したと表示登記を行い、(2)昭和50年8月に床面積を122.13平方メートルに増築する建築確認申請を新潟市に出しているが、表示登記は存在せず、(3)平成22年3月に床面積を132.45平方メートルに増築したと表示登記があるが、(3)の10.32平方メートルの増築は建築確認申請を出していない。
上記(2)の建築確認の際には、道路反対側境界から4mの幅をみなし道路として建築物の「後退」(いわゆるセットバック)させることが建築の条件とされている。本件道路の対面の土地であるB町18番27、同18番4と道路との境界には、当時からブロック塀が存在し、前記建築確認等台帳記載証明書によれば既存道路幅は2.73mであり、これを4mの幅の道路に拡幅することを条件として建築確認を得ていることになる。
ところが、現在同氏の敷地には、本件道路にブロック塀と土留が設置され、反対敷地のブロック塀との間の道路幅は2.4mないし2.5mとなっており、前記(2)建築申請の際に自己申告していた道路幅より狭くなっている。これらの土留等は、上記みなし道路内に建築してあり、前記建築条件に違反し、結果的に建築基準法第44条第1項本文「建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は増築してはならない。」との法令に違反するものである。
F氏が言うには、ブロック塀等は上記(3)の増築の際にG工務店が設置したとのことである。
3 新潟市A区B町16番6の建築物(所有者H氏)
A区B町16番6所在の敷地及び地上建物は、H氏が所有するものであるが、同氏は平成12年12月に建物を新築したとの保存登記を行い、当該建築に際して平成12年9月に新潟市に対して建築の建築確認申請を提出している。
上記建築確認申請においては、道路反対側境界から4mの幅をみなし道路として建築物の「後退」(いわゆるセットバック)させることが建築の条件とされていた。前記建築確認申請書によれば、既存道路幅は2.7mであり、これを既存道路の中心線から2mの線まで道路とし、最終的に幅員4mの幅の道路に拡幅することを条件として建築確認を得ていることとなる。その後、道路対面の住宅は、平成23年の増築時に既存道路幅を2.43mとしてセットバックを履行している。
既存道路幅は、同氏の平成12年新築時の2.7mから平成23年に2.43mに狭まっており、本件道路にブロックフェンスが設置され、反対敷地のブロック塀との間の道路幅は3.25mとなっている。これらのブロックフェンスは、上記みなし道路内に建築してあり前記建築条件に違反し、結果的に建築基準法第44条第1項本文の「建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は増築してはならない。」との法令に違反しているものである。
4 新潟市A区B町18番27の建築物(所有者I氏、J氏)
A区B町18番27、同18番28所在の敷地及び地上建物は、I氏、J氏が所有するものであるが、同氏らは平成19年1月に建物を新築したとの保存登記を行い、当該建築に際して平成18年6月に新潟市に対して建築の建築確認申請を提出している。
上記建築確認申請においては、道路反対側境界から4mの幅をみなし道路として建築物の「後退」(いわゆるセットバック)させることが建築の条件とされていた。前記建築確認申請書によれば、既存道路幅は2.7mであり、これを既存の道路中心線から2mの線まで道路とし、最終的に幅員4mの幅の道路に拡幅することを条件として建築確認を得ていることとなる。
ところが、現在同氏らの敷地には、本件道路にブロック塀が設置されたままであり、反対敷地のブロック塀土留等との間の道路幅は2.4mないし2.5mとなっている。これらのブロク塀は、上記みなし道路内に建築してあり、前記建築条件に違反し、結果的に建築基準法第44条第1項本文の「建築物又は敷地を造成するための擁壁は、道路内に、又は道路に突き出して建築し、又は増築してはならない。」との法令に違反しているものである。
5 道路通行の困難
前述したように、本件アパートは単身者向け賃貸を目的とするワンルームで構成されており、学生の入居者が多く、移動が定期的に存在する。これらの引っ越しの際に、上記のような2.5m程度の幅員の道路では、引っ越し用の車両が建物近くまで入ることが困難であり、著しい不便を甘受させられている。
今般、上記各氏に、建築基準法のみなし道路上への構築物の存在の確認と撤去意思の有無を照会したところ、私有地であるから、構築物を作るのは自由であり、そのようなことを言うのであれば、今後通行を認めないとの対応もなされた。
6 特定行政庁新潟市長への要請
建築基準法、都市計画法は、都市の健全な発展と秩序ある整備を図り、緊急時の緊急車両の出入の確保等、国民の生命、健康及び財産の保護を図るために最低の基準を設定しているものである。
建築基準法上の特定行政庁は、同法第9条に基づき、当該建築物の建築主、工事の請負人等に対して是正措置を命ずることができるとされ、これは、公法上の義務に属するものである。
申立人は、平成30年3月26日付けで特定行政庁である新潟市長に対して、上記建築基準法違反の構築物の除却を命じられたいとの要請書を発し、これは、同月28日午前10時28分に担当課に到達した。
7 特定行政庁新潟市長の職務懈怠
建築基準法は、都市計画区域内では、建築物について幅員4m以上の道路への接道を義務付けており、都市計画区域に指定された時点でこれをみたさない道路についても、いわゆる「みなし道路」として接道義務を尽くしているものと認めるが、当該道路に接する建物を新築する場合等には、4mの幅員を確保させるため、いわゆるセットバックを建築の条件としている。
本件前記建物は、これらの条件を前提として建築が許可されているにもかかわらず、それを遵守せずにみなし道路上に擁壁等を設置しているものである。
これを放置した場合には、火災等の災害時、あるいは急病時に緊急自動車が入れず、住民の避難や救護に重大な危害が及ぶ可能性もあり、また、都市計画法、建築基準法が優良な都市環境を整備しようとしている立法目的が換骨奪胎されることも考えられる(みなし道路は道路交通法上も道路とされており、ここに建築物を設置することは、自らの敷地に条件違反の建築物を建築するより、公衆への危害が及ぶ可能性が高い)。
しかし、上記新潟市長は、書類受領後6か月以上経過する本日に至っても、この違法状態を認識しながら是正に向けた除去命令はもとより、行政指導を行った形跡もなく、現場は前述のまま放置されている。
これは公務員としてその任務を著しく懈怠するものであり、その旨の意見を発出されることを求めるものである。
所管部署
建築部建築行政課(以下「所管課」という。)
調査の結果
平成31年1月23日 決定
所管課の対応に非があるとは認められない。
調査結果の理由
当審査会では、申立人及び所管課から資料を提出してもらい、聞き取りを行った。
申立人は、B町16番9及び同16番11の道路(以下「当該道路」という。)上に突き出ているブロック塀や土留について、建築物所有者が除却するよう市に命令あるいは指導することを求めているものである。
当該道路は、建築基準法第42条第2項で定めるいわゆる「みなし道路」であり、都市計画区域の指定時に幅員4mの基準を満たさない道路について、道路中心線からそれぞれ両側に2mずつの幅を道路として認めるもので、その後の建物等建築の際のセットバックなどでその幅員を確保することを条件としているものである。
違反建築物への対応手順としては、(1)違反に係る情報を入手する (2)現地確認により状況を把握する (3)建築物所有者に対するヒアリングを行い事実確認をする (4)違反があった場合には、是正に向けた指導、さらに勧告を行う、ということになる。
所管課においては、この対応手順に従って、平成30年3月における申立人からの指摘を受けて、直ぐに現地を確認するとともに、対象建築物の所有者など関係者に面会し、状況確認と当該道路に係る法規制等を説明し、違反状態がある場合には是正の必要がある旨を伝えているほか、対象建築物の設計に携わった者からも経緯等を聴取している。
当該道路が、いわゆる「みなし道路」の指定を受けたのは、昭和26年1月23日であって、その当時の道路の中心線が基準となるものであり、当該道路上に突き出ているブロック塀や土留が、「違反建築物であるか否か」を判断するためには、「当該道路の中心線の位置がどこか」を確定する必要がある。
申立人は、「平成12年あるいは平成19年当時の道路の中心線が当該道路の中心線である」と主張しているが、当該道路であるB町16番9及び同16番11については、昭和61年11月20日に分筆されており、分筆前である昭和26年当時には、当該道路部分がそれぞれB町16番6又は同16番3の一部であったこと、また昭和26年当時における道路としての使用範囲が不明確であることや、対象建築物所有者の中には当該道路の中心線の位置について申立人と全く異なる認識である者もいることが確認されていることなどから、「当該道路の中心線は明確である」とは言えないものである。
道路の中心線が確定して初めて、当該道路の使用が「法令に違反しているか否か」が明らかになり、違反している場合に是正の指導さらには勧告を行うことになるが、現状では、その中心線が未確定であることから、所管課としては申立人が求める除却の命令あるいは指導を行うことができないものである。
以上によって、調査結果のとおり判断する。
なお、当該道路の状況は、申立人が指摘しているとおり、改善されることが望ましいものであることから、所管課においては、当該道路の中心線が速やかに確定されるよう、当該道路の関係者に対して協議を促す等の働き掛けを行い、その結果違反が確認された場合には是正の指導等を行ってもらいたい。
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