(27-1-4)区により異なる新潟市の建築入札の実質的入札参加資格について改善を求める
最終更新日:2016年3月8日
(27-1-4) 区により異なる新潟市の建築入札の実質的入札参加資格について改善を求める
平成27年11月25日 苦情申立受理
申立ての趣旨
新潟市が実施する建築入札における実質的入札参加資格は、事前に公示されていないのみならず、その根拠の内規すら存在しないものがある。その結果、区により資格が不統一で、担当者により恣意的な運用がされている。
これは、入札制度の信頼を著しく損なうとともに、入札者に不測の損害を与えるもので、改善を求める。
申立ての理由
申立人は、A区総務課(以下「所管課」という。)が平成27年〇月〇日付けで一般競争入札により公告した「B施設外部改修工事(建一第〇〇号)」に入札した。同工事の公示による入札資格の「実績要件」は、「平成17年4月1日以降に竣工した、下記いずれかの工事の元請実績があるもの。ただし、1については、公共工事又はコリンズ(CORINS)登録の公共発注機関等の工事に限る。1.延床面積700平方メートル以上かつ複数階非木造の大規模改修(大規模改造)工事 2. 延床面積700平方メートル以上かつ複数階非木造の新築、増築、もしくは改築の建築一式工事」というものであった。
申立人は、〇月〇日に同工事について落札者と決定した旨の通知を受領したが、その後の〇月〇日付け「入札資格参加審査結果通知書」によれば、「資格なし」と判定された。
申立人がその理由について説明を求めたところ、所管課の担当者は、実績調書に記載の「市営住宅〇号棟外壁改修工事(建一第〇〇号)」は、上記1及び2のいずれにも該当せず、また該当する他の工事実績の提示もないことから、入札参加資格がないものと判断したとし、上記要件の1に定める「大規模改修(大規模改造)工事」に該当するか否かについては、主要構造部2箇所以上に係る工事を目安に判断していると答えた。
申立人は、工事実績として「市営住宅〇号棟外壁改修工事(建一第〇〇〇号)」を単独で落札し、新潟市と工事請負契約を締結し竣工させている。同工事は、延床面積1,175.63平方メートルの外壁改修工事であった。
申立人は、前記A区の建一第〇〇号工事の入札に先立ち、D区が実施した「E小学校屋内体育館天井改修工事(建二第〇〇号)」を一般競争入札で落札し、工事請負契約を締結しているが、同工事について、D区が平成27年〇月〇日付けでした入札公告による実績要件によれば、「平成17年4月1日以降に竣工した、下記いずれかの工事の元請実績があるもの。ただし、1については、公共工事又はコリンズ(CORINS)登録の公共発注機関等の工事に限る。1.延床面積600平方メートル以上かつ非木造の建築物の大規模改修(大規模改造)工事 2.延床面積600平方メートル以上かつ非木造の新築、増築、もしくは改築の建築一式工事」というものであり、建一第〇〇号工事とは、延床面積と建物の階数が異なるのみであり、他の文言は全く同一であった。そして、この工事に関しては、申立人の前記「市営住宅〇号棟外壁改修工事(建一第〇〇〇号)」を工事実績として入札資格が認められて、契約に至っている。
建築基準法第2条第14号は、「大規模の修繕」について「建築物の主要構造部の1種以上について行う過半の修繕をいう。」と定義し、「主要構造部」とは「壁」を含んでいる。この文言について、所管課の担当者が記載しているような「2箇所以上に係る工事を目安に」というような要件は、同法に存在しないばかりか、同法は、明確に「1種以上」と定義している。
申立人が所管課の担当者に「2箇所以上に係る工事を目安」とする根拠を尋ねたところ、規則等の明文根拠はなく、「慣行」であると説明している。しかし、新潟市に区制が導入されたのは、平成19年であり、D区においては、そのような要件が設定されていないことは、前記建二第〇〇号工事を申立人が同一工事を実績として掲げて契約を締結していることに照らしても明らかである。
結局、所管課の工事担当者が、何ら法令根拠もないまま、「慣行」と称して、事前に告知もせず、しかも、法律の明文に反する恣意的な要件を付加して、入札資格を否定しているものである。
申立人のような中小企業は、個々工事の受注の可否が、経営に直接影響をしている。落札ができた段階で、工事の手配をして契約できるものとして準備を行っている。これを上記のように根拠なく否定され契約を拒否された場合には、公共工事の何を信頼して入札すべきか判断することもできない。
本件については、審査会において、上記実態を調査のうえ、入札資格という入札業者にとって場合によっては死命を制するような工事実績要件については、区ないし担当者により恣意的または異なる運用がなされないように統一すること、そして、これを事前に判断できるように明確に公示するよう是正すべく勧告することを求める。
所管部署
A区総務課
調査の結果
平成28年1月15日 決定
意見の趣旨等
1 工事実績要件は入札に参加するかどうかを決定する上で必要かつ重要な情報であり、入札参加者に誤解が生じないように、明確に公示するよう改善されたい。
2 工事実績要件の設定が区の担当者により恣意的または異なる運用がなされているので統一するべきという指摘については、一つ一つの工事内容が多種多様であり、その都度関係課と協議の上、個別に要件設定を行わなければならないという事情があることから、統一することは難しいと判断する。
意見の理由
1について
申立人は、平成27年9月1日に公告された当該工事入札参加資格の実績要件中、「大規模改修(大規模改造)」の解釈を建築基準法第2条第14号にある「大規模の修繕」(建築物の主要構造部の1種以上について行う過半の修繕)の定義を類推し、またD区が実施した別施設の「大規模改修(大規模改造)」工事の実績もあることから、入札資格があると判断して一般競争入札に参加した。
その結果、最低価格で落札候補者となるも、所管課からは実績要件の「大規模改修(大規模改造)」(主要構造部2箇所以上にかかる工事)の実績がないため入札資格なしとの審査結果を受け、契約には至らなかった。
所管課によれば、今回の入札で実績要件として設定した「大規模改修(大規模改造)」は建築基準法の用語「大規模の修繕」ではなく、本庁契約課の一般競争入札の要件例示の中で示されている用語であり、同じものとは考えていないとのことであった。
入札参加者にとっては「大規模改修(大規模改造)」について明確な定義が示されていない以上、建築基準法の定義や過去の工事実績から類推するか、所管課に直接問い合わせなければ入札資格を判断することは困難と思われるが、「大規模改修(大規模改造)」該当の可否における主要構造部の箇所数は重要な要素であり、本件の工事については、主要構造部2箇所以上の工事実績が必要であると明確に公示するべきであった。
また、所管課によれば、本庁契約課(以下「契約課」という。)による実績要件等の例示に縛られる形で表記していたというが、あくまでも例示であり、そこに表記されていない重要な要件があれば、先ずもって契約課に協議すべきであったと考える。
なお、契約課によれば、大規模改修(大規模改造)は工事ごとに多種多様な内容が考えられ一律の基準は存在しないため、単純に「主要構造部何箇所以上」で表現できるとも限らず、一括りでできないのであれば、その用語を用いずに適切な表現にすべきとの見解である。また、工事請負契約については予定価格で本庁と各区で権限が分かれており、区の権限に対して契約課が総括的に指導する立場にはないとのことであるので、各区で調整すべき事項があれば、連絡会議などで協議・研究していくことも必要であろう。
これらの状況から、今後は本件のような事態の発生を防止すべく、入札参加資格要件の重要な部分については、可能な限り明確に公示できるよう改善されたい。
2について
当審査会で確認したところ、工事実績などを含む入札参加資格要件は、各区の「請負工事等審査委員会」が工事ごとに決定しているものであり、区だけでなく工事によっても統一されてはいないとのことであった。しかしながら、その最終決定は同委員会が行うものであり、申立人の言う「担当者による恣意的な運用」によるものではないと考える。
また、工事ごとに多種多様な要件設定が必要になってくるため、統一的な要件設定は困難であり、最終的に要件の内容については各区の裁量に委ねられることもやむを得ないものと思われる。なお、所管課においては、相手方への説明について、工事内容に基づく明確な根拠を示しながら、適切かつ丁寧な対応を心がけられたい。
以上のことから、上記のとおり意見の表明を行う。
所管課の処理方針
平成28年2月22日 A区総務課
A区の発注工事では、一般競争入札における建築物の改修工事の実績要件において、入札参加者に誤解が生じないよう、「大規模改修(大規模改造)」という表現は用いず、明確な内容で公示するように改善していきます。
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