市報にいがた 令和元年6月16日 2697号 2面
最終更新日:2019年6月16日
聴覚障がいと共に生きる
手話を日常言語として使用している加藤厚子さんと渡辺正さんにお話を伺いました。
加藤厚子(あつこ)さん
2歳の時、高熱の病気が原因で失聴。現在、NPO法人新潟市ろうあ協会で事務職に従事。
渡辺正(ただし)さん
生まれつき聴覚障がいがある。現在、本市の手話通訳者養成講座の講師を務める。
周囲とのコミュニケーションに苦心した過去
幼い頃から耳が不自由だった加藤さんと渡辺さん。当時、2人を取り巻く社会状況は非常に厳しかったといいます。
加藤さん 「通っていた聾(ろう)学校では、紙片を入れたコップに息を吹きかけて発音のやり方を覚えたり、相手の口の動きを見て話している内容を読み取ったりする練習をしました。正しい発音を身に付けるのはとても難しく、つらかったですね」
渡辺さん 「学生時代は手話がまだ一般的に認知されておらず、“手まね”と呼ばれて恥ずかしいものだと考えられていました。先生からは『学校外で使ってはいけない』と言われたものです」
聾学校を卒業し就職した後も、周囲との意思疎通には苦労が多かったそうです。
渡辺さん 「パン工場で出荷数を管理する仕事に就きました。職場では主に筆談でやり取りをしていましたが、複雑なパンの種類や数の過不足を伝えるのは大変でした。忙しい現場で、同僚ともコミュニケーションが取れずに寂しい思いをしました」
加藤さん 「和裁の仕事をしていましたが、仕立ての技術は先輩の手本を見て覚えるしかなく、健常者の同僚にはどうしても後れを取ってしまいました」
手話でお互いの世界が広がる
最近は手話に対する理解が進み、聴覚障がいのある人にとっても、少しずつ暮らしやすい社会に近づいていると2人は話します。
渡辺さん 「昔は町内会の集まりに出ても周りの話になかなか付いていけませんでしたが、最近は手話通訳者を派遣してもらえるようになり、難しい内容も理解できるようになりました。分からないことがあっても質問ができるのでありがたいです」
加藤さん 「担当の民生委員の方は少し手話が使えるので、健康相談ができて助かっています。近所にも手話を勉強してくれている方がいて、手話であいさつができるのがうれしいですね」
とはいえ、手話で日常会話ができる人はまだまだ少ないのが現状です。聴覚障がいのある人と接するとき、どんなことに気を付ければいいのでしょうか。
加藤さん 「後ろから声を掛けられても気が付かず、意図せず相手に不快な思いをさせてしまったことがあります。そんなときは、ぜひ正面から目線を合わせて話し掛けてほしいですね」
渡辺さん 「何げない普段のあいさつなどから、少しずつでも手話を覚えてもらえるとうれしいです。外国人と話すためにその国の言葉を勉強するように、聴覚障がい者とコミュニケーションすることで、お互いの世界が広がると思います」
誰もが暮らしやすい地域社会を目指して
本市は市民が手話への理解をより深め、手話を必要とする人が豊かな生活や人間関係を築くための取り組みを進めています。
学校での聴覚障がい者との交流
聴覚障がい者が市内の小・中学校で普段の生活や手話について語るなど、児童・生徒と交流しています。地域の中で障がい者と助け合い支え合うことを学び、「こころのバリアフリー」を推進しています。
桃山小学校での交流
手話通訳者・要約筆記者の派遣
聴覚障がい者などの日常生活を支援するため、講演会や町内会の会合などに手話通訳者や要約筆記者を派遣しています。まずは相談してください。
参加費 無料
申し込み 所定の申請書を障がい福祉課(電話:025-226-1238、FAX:025-223-1500)へ
※営利・政治・宗教活動は対象外。申請書、派遣基準は市ホームページに掲載
手話を学んでみませんか
市社会福祉協議会では、市内で手話の学習や聴覚障がい者との交流などの活動を行っているボランティア団体を紹介しています。詳しくは問い合わせてください。
問い合わせ 同協議会地域福祉課(電話:025-243-4370)、区ボランティア・市民活動センター
知っていますか? 思いやりのマーク
耳マーク
聴覚障がいのある人が、耳が不自由であることを周りに伝えるためのマークです。「はっきりと口元を見せて話す」「手話や筆談をする」などの対応をお願いします。
聴覚障害者標識(蝶々(ちょうちょう)マーク)
聴覚障がいのある人が運転する自動車であることを示しています。このマークを付けた自動車の運転者は警音器の音が聞こえないことがあります。安全に通行できるように配慮しましょう。
※このほか別冊情報ひろば4面に障がい者に関するマークを掲載
編集後記~取材を終えて
「聞こえないのは不便だけど不幸じゃない」。渡辺さんの言葉からは、聴覚障がいを「個性」として受け入れ、その上で自分らしく生きたいという思いが感じられました。
「聞こえない人がいる」ことをみんなが理解し、手話などで気持ちを伝え合えるようになると、さらに安心して暮らせるまちになっていくのではないでしょうか。
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